近年、オフィスの集中空間や会議室として「個室ブース」を導入する事例が急速に拡大しています。駅構内などに設置されたワークブースを見て、興味を持った方も多いのではないでしょうか?
この記事では「個室ブース(テレワークブース・Web会議ブース)」の概要やおすすめの製品、導入方法などを解説します。「個室ブース」の導入を検討している人の参考になる情報を網羅的にまとめました。
なお、導入用途が具体的に決まっており、製品を比較検討したいと考えている場合は「こちら」の記事も参考にしてみてください。
目次
個室ブース(集中ブース)とは?オフィスや個人での導入が急増
「個室ブース」とは、仕切りや壁などで覆われた小さな空間・小部屋のことです。主に会社のオフィスや個人宅に設置し、周囲を気にせず作業を行うために使用されます。
「個室ブース」には、「集中ブース」や「ワークブース」「テレワーク(リモートワーク)ブース」「Web会議ブース」などといった呼称もあります。呼び方が異なっても、性能や用途はほとんど変わりません。
個室ブース製品には「目隠し効果」と「一定の遮音性」があるものが多く、集中環境として使えるように工夫されています。その他「コンセント・USBポート」や「ライト」といったオプション機能が付属されたものもあり、製品によってサイズや収容可能人数も異なります。用途によって合う製品が変わってくるため、導入する前には比較検討が必要です。製品の比較方法についてはこちらの記事で詳細を解説しています。リンク
個室ブースを導入する主な目的
個室ブースは以下の目的で導入されるケースが多いです。
- オフィスや自宅でWeb会議を行うため
- オフィスで従業員が集中して作業を行うため
- 対面会議・面談用
- クリニックの待合室や隔離室として
- 自宅でリモートワークを行うため
- 自宅で動画配信やオンラインゲームを行うため
- その他、趣味や集中作業を行うため
個室ブースの形状
「個室ブース」と呼ばれるものの中には、四方が壁に覆われた「ボックス形状のもの」と、コの字のパーテーションで区切られた「スペースをつくるだけのもの」とがあります。
▼ボックス形状の個室ブース
▼スペースをつくるタイプの個室ブース
引用元:オカムラ
なお、ボックス形状のブースは天井が閉じた「フルクローズ型」と天井が開放した「セミクローズ型」に分かれます。それぞれの特徴は記事の後半で解説します。
またこちらの記事では具体的な製品を紹介・比較解説しています。具体的な製品をお探しの場合はぜひご参照ください。リンク
なぜ個室ブースが選ばれているの?導入が拡大している理由や背景とは
個室ブースの市場規模は年々拡大しており、2025年にはワークブースサービス市場が24億円規模になると見込まれています※1。また個室ブース市場の拡大を表す事例としては、地下鉄構内に設置された個室ワークブース「ココデスク」の2023年12月の稼働率が、前年比2倍に伸長したという報道もあります※2。
個室ブースの需要が拡大している背景には、主に以下3つの要因があります。
- 「働き方改革」によって、テレワーク(リモートワーク)の普及が後押しされたこと
- フリーアドレスやWeb会議といった、新しい働き方が拡大していること
- 新型コロナウイルス感染症の流行によって、周囲から隔離された作業スペースが必要とされたこと
少子化に伴う人手不足の解消などのために打ち出された「働き方改革」によって、企業は従業員の生産性向上や職場環境の改善が求められるようになりました。個室ブースは、「従業員の生産性向上」や「働きやすい環境」を実現するための設備として注目を集めているのです。
また新型コロナウイルスの流行によって「お家時間」が増えたことや、オフィスにおいて「感染防止策」が必要になったことも、個室ブースの需要が増えた大きな理由として挙げられます。
※1参考:ワークブースサービス市場2025年に24億円規模に
※2参考:https://www.jiji.com/jc/article?k=2024021900591&g=eco
個室ブースのメリットとデメリット
個室ブースを導入することには多数のメリットがありますが、一方でデメリットもあります。メリットとデメリット双方を理解して製品選びをすることで、個室ブース導入後の満足度を上げることができるでしょう。
▼メリット
- 雑音と視線を遮断して集中しやすくできる
- 会議室の取り合いがおこりにくくなる
- 社内の様子を映さずにWeb会議ができるようになるため、取引先や顧客などとのやりとりが行いやすくなる(情報漏洩のリスクを抑えられる)
- リフォームで新しい部屋を造るよりも安価に済ませられることが多い
▼デメリット
- 導入費用(レンタルの場合は月額費用)がかかる
- 製品によっては、消防法の届け出などの手続きが必要になる
- 設置できるスペースを確保する必要がある
個室ブースの種類は大きく分けて3種類|特徴や費用・設置例
個室ブースは、形状や特徴によって主に3タイプに分けることができます。3タイプの特徴や価格を比較してみましょう。
個室ブースのタイプ | 形状 | 性能・特徴 | 費用相場 | |
1 | フルクローズ(完全個室) | 天井あり・扉ありのボックス型 | 気密性があり、防音性能が高い製品が多い | 60万~100万円 |
2 | セミクローズ(天井なし・扉あり) | 天井なし・扉ありのボックス型 | 適度な防音性能があり、集中ブースとして優れた製品が多い | 20万~60万円 |
3 | オープン(天井なし・扉なし) | 天井や扉がない、ついたてのみのパーテーション型 | 防音性能は低いが目隠し効果があり、設置や片付けが簡単 | 10万~20万円 |
フルクローズ(完全個室)
電話ボックスのような完全個室形状をしている個室ブースです。気密性が高く内部の設備が充実している製品が多いため、製品価格が高額になるものが多いです。
▼フルクローズ型の設置例
- 機密事項が含まれるWeb会議を行う空間として
- 個別面談を実施する場所として
フルクローズ型のおすすめ製品は、「テレキューブ」です。
引用元:テレキューブ
価格 | 要問い合わせ |
サイズ | 幅1200×奥行1100×高さ2300mm |
重さ | 285kg |
コンセント | 3口(購入の場合、変更可) |
USBポート | 要問い合わせ(購入の場合、変更可) |
空調機能 | 換気ファンあり |
消防法への対応や追加工事 | 消防署への申請や追加工事が必要な場合もあるため、要問い合わせ |
会社 | 株式会社ブイキューブ |
※ソロ(1人用)の場合
セミクローズ(天井なし・扉あり)
ボックス形状かつ天井が開放されているのが「セミクローズ」タイプです。四方は壁に囲まれているため適度な防音性能があり、集中空間やWeb会議用のブースとしてなど幅広い用途にマッチします。
軽量かつ設置が簡単な製品も多く、キャスター付きで移動できるものもあります。オフィスだけでなく、個人にも選ばれることの多いブースタイプです。
▼セミクローズ型の設置例
- 集中して作業をしたい従業員のスペースとしてオフィスに
- 機密事項の含まれないWeb会議用の空間として
- リモートワーク用に自宅に
- 医療機関の聴力検査スペースとして
セミクローズ型のおすすめ製品は、柔軟なカスタマイズが可能な「おもいっきり集中空間」です。
価格 | 要問い合わせ(298,000円程度~) |
サイズ | 幅1370×奥行1080×高さ1840mm |
重さ | 30kg程度 |
コンセント | 1口 |
USBポート | 1口 |
空調機能 | 天井開放 |
消防法への対応や追加工事 | 不要 |
会社 | 株式会社アドライズ |
オープン(天井なし・扉なし)
「オープン」タイプは、扉がなく天井も開放したパーテーション型の個室ブースです。ボックス型のブースよりも軽量かつ安価に導入できる点が魅力です。
目隠し効果はありますが、防音や遮音性能はあまり期待できません。短時間の作業スペースや休憩スペースとして活用する方法が一般的です。
▼オープン型の設置例
- オフィス内の休憩スペース兼作業スペースとして
- 機密事項の含まれない面談・商談用スペースとして
- リモートワーク用として自宅に
オープンタイプのおすすめは、アイリスチトセの「シンプルブース」です。複数基を連結させることもできる製品です。
引用元:アイリスチトセ
価格 | 要問い合わせ |
サイズ | 幅1266×奥行1266×高さ1600mm |
重さ | 要問い合わせ |
素材 | パネル:フェルト+MDF(中質繊維板)・パーチクルボード |
カラー | ダークグレー(フェルトカラー) |
会社 | アイリスチトセ株式会社 |
上記以外の様々な製品を比較したい場合は、こちらの記事で詳細を紹介しています。あわせてご参照ください。リンク
個室ブースの選び方|使用目的に合った性能や価格かをチェックしよう
個室ブースは使用目的に合った性能の製品を選びましょう。例えばWeb会議用に個室ブースを導入したい場合「一定の防音効果があり」や「長時間使っても快適に過ごせる」製品を選ぶ必要があります。
製品を選ぶ際に注目したいポイントは、以下の4点です。
チェックポイント | チェックしたい内容 |
防音効果(遮音性) | 目的に合った一定の防音性能が確保できるか防音効果を測定する実験結果が数値で公表されているか |
サイズ(寸法)・重量 | 床の耐荷重に合った重量か室内レイアウトに沿ったサイズか |
内部の快適性 | 作業時に手元を照らすライトがあるかコンセントやUSBポートなどを設置できるか換気機能はあるか、空調は快適か |
導入の手軽さ | 消防法の届け出が必要かどうかキャスターで移動ができるか設置が自力で行えるか |
性能の高さが必ずしも導入したときの満足度に直結するとはかぎりません。目的に合った過不足ない性能のものを選ぶことで、コストを抑えつつ導入満足度を上げることができます。
個室ブースの導入目的別の詳しい選び方や、より詳細な比較方法についてはこちらの記事で詳細を解説しています。ぜひ参考にしてください。リンク
個室ブースの導入方法は購入とレンタルの2種類
個室ブースを導入する方法には、以下の2通りがあります。
- メーカーや通販サイトから購入する方法
- オフィス家具サイトなどからレンタルする方法
それぞれの方法のメリットとデメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット | |
購入 | ・買い切りなので、継続料金がかからない・自社に合ったカスタマイズができる・幅広い選択肢から自社にあったものを選択できる | ・一定の初期費用がかかる・使用しなくなった際に、処分や撤去が手間になる |
レンタル | ・初期費用を抑えられる・製品価格の高い製品を安価に導入できる・短期的な利用に向いている | ・月額料金が発生するため、長期的な利用だと費用がかさむ・レンタルできる製品が少ない・自由にカスタマイズできない |
長期的に使用することを想定しているのであれば、購入した方が費用的にも安く済む可能性が高いでしょう。また、幅広い選択肢の中から自社や自宅に合った製品を導入できます。
一時的な利用の場合はレンタルの方が適しているケースもあるため、使用の目的や使用する期間を具体的に想定したうえでどちらの方法を選ぶかを決定するとよいでしょう。
より詳しい購入方法のポイントや手順、流れについては、こちらの記事で詳細を解説しています。リンク
個室ブースの設置・運用の注意点
個室ブースの設置や運用に関する主な注意事項は以下のとおりです。
▼設置の注意点
- オフィスの管理会社に設置の可否について確認すること
- 床の耐荷重にあった製品を導入すること
- 製品の防音性能だけでなく、オフィス内の騒音レベルも確認しておくこと
- 消防法の適用があるかないかを事前に確認しておくこと
- 電気配線や空調の位置を確認し、適切な位置に設置すること
▼運用の注意点
- 運用ルールを定める(飲食の可否、使用時間、使用方法など)
- 寸法、搬入経路、移動有無の確認
オフィスに個室ブースを設置する際は、消防法や建築基準法に違反しないように注意が必要です。フルクローズ型の個室ブースは建築基準法上で「居室」扱いとなる可能性があり、管轄の消防署への届け出や防災設備の設置などが必要になるケースがあります。
申請や法令の確認には一定の時間がかかるため、フルクローズ型の個室ブースを導入する際は、オフィスの管理会社とも連携しながら慎重に進めていきましょう。