聴力検査に使用される聴力検査ボックス(聴力検査室・聴力検査ブース)には、適切な防音性を備えていることや、設置のしやすさなどが求められます。
コストを押さえて聴力検査ボックスを導入したいと考えている場合は、設置が容易で防音性能を有した「半個室タイプの簡易ブース」を検討するのがおすすめです。
この記事では、聴力検査ボックスに必要な防音性能についての詳しい情報や、適切な製品の選び方について解説していきます。
目次
聴力検査ボックスは大きく分けて3種類!それぞれの概要と費用相場
聴力検査ボックスを導入する場合、以下3種類の選択肢から製品を選ぶのが一般的です。
聴力検査ボックスの種類 | 概要 | 費用相場 | |
1 | 半個室タイプの防音ブース | 天井が開放した個室ブースを、聴力検査用として院内に設置する | 30万円~ |
2 | カーテンやパーテーション | 防音性の高い仕切り板やカーテン等で、検査用の空間を作る | 10万円~ |
3 | 聴力検査専用ブース | 聴力検査専用のブースを院内に設置する | 150万円~ |
クリニック内が比較的静かな環境にある場合は「半個室タイプの防音ブース」や「カーテンやパーテーション」を活用すれば、コストを押さえつつ検査に必要なだけの遮音環境を確保できる可能性があります。
より専門的な検査を行う必要がある医療機関においては、「聴力検査専用ブース」を導入する必要性が高いといえるでしょう。
聴力検査専用ブースは高額なので、コストを押さえて導入するためには以下の方法を検討することをおすすめします。
- 中古品を購入する
- リースを活用する
型落ちした製品の中古品はより安価に手に入りますが、通常あまり出回ることはありません。自分のクリニックの要望に合った製品がタイミングよく手に入ることは稀ですが、導入を検討する場合は医療機器販売店等で中古品の在庫を確認しておくとよいでしょう。
聴力検査ボックスの選び方|メリット・デメリットや特徴を比較
それでは、3種類の聴力検査ボックス導入方法について、詳細を確認していきましょう。
どのタイプの聴力検査ボックスを選ぶべきかは、「コスト」「メリット・デメリット」「どのような場所に設置できるか」などの情報を総合して検討することが大切です。3種類の聴力検査ボックスのメリットデメリットを簡単にまとめると、以下の通りとなります。
主なメリット | 主なデメリット | 防音性 | 設置・移動のしやすさ | |
半個室タイプの防音ブース | コスト・性能・設置しやすさのバランスがいい | 周囲がうるさい環境だと効果が感じられにくいことがある | ◯ | ◎ |
カーテンやパーテーション | どこでも簡単に設置できる | 防音性能が低い | △ | ◎ |
聴力検査専用ブース | 防音性が高く、専門的な検査が可能 | 製品重量があるため設置場所が限られるうえ、コストが高くなる | ◎ | △ |
コストと防音性能を総合した時に最もおすすめなのが「半個室タイプの防音ブース」を導入する方法です。特に、検診センター等の医療機関において標準純音聴力検査を行う場合のブースとして適しています。
それぞれの種類について、メリットやデメリットや、どういった場合に導入が適しているのかを細かく解説していきます。設置予定場所の環境や条件と照らし合わせながら、どの方法が適しているかをチェックしてみましょう。
聴力検査ボックスの種類1.半個室タイプの防音ブース
引用:おもいっきり集中空間
天井が開いた「半個室」のブースを、標準純音聴力検査用の検査室として利用する方法です。「半個室タイプの防音ブース」の聴覚検査ボックスとしての特徴は以下のとおりです。
コスト | 比較的安い(30万円~) |
防音性能 | 比較的高い |
設置可能な場所 | 屋内 |
設置・移動の手間 | 簡単(一人で組み立て可能、キャスター付き) |
工期・設置時間 | 30分程度 |
消防法の届け出 | 不要 |
「半個室タイプの防音ブース」を聴覚検査に利用する方法には以下のメリットがあります。
- 様々なサイズの製品がある・サイズを柔軟にカスタマイズできる
- 消防法の届け出がいらない
- 製品によっては仕様や内装などを柔軟にカスタマイズができる
- 移動しやすい
- 組み立て・片付けが簡単
- 軽量な製品が多い
「半個室タイプの防音ブース」はWeb会議やオフィスのワークブースとしても活用されており、十分な防音性能と快適性を有している点が特徴です。
例えば、聴力ボックスとして利用できるワークブース「おもいっきり集中空間」は、周囲の騒音からマイナス10デシベルほど低下させられる防音性能を有していることが確認できています。
さらに「半個室タイプの防音ブース」は軽量な製品が多く、組み立ても簡単なので設置場所を選びません。上述の「おもいっきり集中空間」の場合、基本サイズの製品重量は30kgと超軽量。さらにキャスターを設置することもでき、必要に応じて簡単に場所の移動が可能です。
一方で「半個室タイプの防音ブース」のデメリットは、以下のとおりです。
- 聴力検査専用ブースと比較すると、防音性能が低い
- カーテンやパーテーションよりはコストが高くなる
以上を総合すると半個室タイプの防音ブースは、比較的静かな環境にあるクリニックや、検診センターなどの聴覚検査ボックスに向いています。組み立て・片付けも専用工具を使わずに行えるため、出張検査が必要な医療機関においてもおすすめです。
聴力検査ボックスの種類2.カーテンやパーテーション
遮音材が使用されたカーテンやパーテーションを取り付けて周囲を取り囲むことで、聴覚検査エリアとする方法です。ブースタイプのように四方を壁に囲うことはできませんが、設置場所次第では一定の防音効果が見込めます。
コスト | 安い(10万円~) |
防音性能 | 低い |
設置可能な場所 | 屋内 |
設置・移動の手間 | 簡単 |
工期・設置時間 | 数十分 |
消防法の届け出 | 不要※天井まで隙間なく届くパーテーションを設置する場合は、消防法の届け出が必要になる |
「カーテンやパーテーション」を聴力検査に活用する方法には、以下のメリットがあります。
- 比較的手軽なコストで導入できる
- ブースが入れられない狭いエリアにも設置できる
- 工事不要で設置できる
- 消防法の届け出がいらない(天井までの高さのパーテーションの場合は届け出が必要)
十分な遮音効果を得るためには、高さのあるパネルを選んだり、吸音性能が実証されている製品を選ぶことが重要です。ただし、天井まで届く高さのものを選んでしまうと「消防法」の届け出が必要になるため注意が必要です。
「カーテンやパーテーション」を使用する際のデメリットは、以下のとおりです。
- 周囲の騒音レベルが高い場合、十分な防音性能が得られない可能性が高い
- 倒れる・破損するといった危険性がある
防音性能に関してはどうしても、「半個室タイプの防音ブース」や「聴力検査専用ブース」と比較すると低くなってしまいます。特にカーテンの場合は交通音等の低音を遮断する性質が弱い傾向があるため、周囲の騒音が大きい場所での使用は避けたほうがいいかもしれません。
以上を総合するとカーテンやパーテーションを聴力検査に活用する方法は、周囲がかなり静かな環境である医療機関向けだと言えます。健診センターなど、耳鼻科を専門とする医療機関以外での使用が適しているでしょう。
聴力検査ボックスの種類3.聴力検査専用ブース
医療機関用に開発された、聴力検査専用のブースです。堅牢な構造で極めて優れた遮音性を持ち、精密な聴力検査を行うことができます。
コスト | 高い(150万円~) |
防音性能 | 非常に高い |
設置可能な場所 | 屋内(床の耐荷重が製品の重量にあった場所) |
設置・移動の手間 | 一度設置したら移動は難しい |
工期 | 1日~ |
消防法の届け出 | 必要な場合がある |
「聴力検査専用ブース」ならではのメリットは、以下のとおりです。
- 防音性能が非常に高く精密な検査が行える
- 消音換気ダクトなどが装備されており、密室ながらも快適な環境で測定ができる
- オージオメータ接続コードやジャックパネルなど、検査に必要な設備が標準搭載されていることが多い
一方で、「聴力検査専用ブース」導入の際は、以下のデメリットに注意する必要があります。
- 小型のものでも300kgほどの重量があるため、床の耐荷重を確認する必要がある
- 導入コストが高い
- 消防法の届け出が必要になる
「聴力検査専用ブース」は堅牢な造りになっているため、小型の製品でも300kg、大型だと1000kg超もの重量があります。設置の際は、設置場所の耐荷重を確認しなくてはならない点に注意が必要です。
以上のメリット・デメリットから、「聴力検査専用ブース」は専門的な検査を行う耳鼻科や大学病院などに適しています。周囲の騒音が大きく、半個室タイプの防音ブースでは防音性を確保できない場合も、聴力検査専用ブースの導入が必要となるでしょう。
聴力検査ボックスに半個室タイプのブースを設置した事例
参考:「これ以外に考えられない」。設置に手間がかからない紙製ブースを選んだことで、個室不足の悩みが瞬時に解決|おもいっきり集中空間
最後に、聴力検査ボックスに半個室タイプのブース「おもいっきり集中空間」を導入した、千曲中央病院(健康管理センター)様の導入事例を紹介します。
聴力検査専用の部屋がないことに課題を感じていた千曲中央病院健康管理センター様は、聴力検査ボックスの導入を検討していました。聴力検査ボックスの候補として「パーテーション」や「聴力検査専用ブース」の導入も考えていたそうですが、以下の理由から導入を見合わせていた経緯がありました。
- パーテーションでは、遮音性が低く、安定性がない
- 聴力検査専用ブースはコストが高いうえ、重量等の要件が合わない
紙製の強化ボードを壁素材とした軽量な防音ブース「おもいっきり集中空間」の存在を知った同病院は、弊社に相談。現地でブースを組み立てながら設置場所や要件を調整し、導入を決定しました。導入後の満足度も非常に高く、特に以下の点に満足しているといいます。
- 軽量で組み立てや移動が簡単に行える
- 患者に快適に検査を受けてもらえる
- 配線穴を、設置場所の状況に応じて変更してもらえた
- 組み立て・分解が簡単に行えるため、設置場所を複数箇所試すことができた
- 中の様子を確認できるように窓付きにカスタマイズできた
<「おもいっきり集中空間」基本情報>
価格 | 要問い合わせ(298,000円~) |
サイズ | 幅1320×奥行1040×高さ1840mm |
重さ | 約30kg |
コンセント | 1口 |
USBポート | 1口 |
空調機能 | 天井開放 |
消防法への対応や追加工事 | 不要 |
会社 | 株式会社アドライズ |
聴力検査ボックスの必要性を解説|防音室にしなくてはいけない理由とは?
聴力検査には様々な種類がありますが、最も一般的かつ基本的な検査である「標準純音聴力検査(測定)」においては防音室で検査を行うことが適切だとされています。つまり、聴力検査を行う医療機関においては、聴力検査ボックスはほぼ「必須」の設備だと言えるのです。
それでは、なぜ聴力検査ボックスが必要になるのか、その理由を掘り下げて解説していきます。
標準純音聴力検査では、被験者にヘッドホンを装着させて様々な周波数・大きさの純音を聞いてもらうことになります。検査時はどの周波数の音がどの程度聞こえたかを正確に判定する必要があるため、周囲に雑音のない環境で検査を実施する必要があるのです。周囲の雑音が入ると正確な値が測定できなくなるため、検査エリアには一定の防音性能が求められます。そのため、防音設備が施された聴力検査室や防音・遮音効果に優れたボックス型ブースの準備が必要になるのです。
なお聴力検査室・聴力検査ボックスが必要なのは耳鼻科だけではありません。「標準純音聴力検査」を行う可能性がある健康診断・人間ドッグ実施医療機関においても同様です。
聴力検査室・検査ボックスに求められる基準の例
続いては、聴力検査室・聴力検査ボックスに求められる防音性能の目安や仕様のポイントについて解説していきます。以下は、聴力検査室に求められる基準の一例です。
- 内部を30~40デシベル以下の環境にできること
- オージオメータ等の測定機器を接続するための配線の穴が開いていること
- 床面積半畳から3畳程度の広さがあること
- 院内に設置できる重量であること
なお補聴器適合検査目的で聴覚検査室を導入する場合は、「補聴器適合検査の指針」に記載の基準を確認のうえで、適した防音性能を有する検査室を選ぶようにしましょう。「補聴器適合検査の指針(2010)」には、補聴器適合検査の音声聴覚検査に使用される検査室の条件として、以下の3項目が記されています。
- 暗騒音が検査結果に影響しない程度であること
- 検査音の反響が測定に影響しない程度であること
- 被験者音判断に影響するような心理的圧迫がないこと
聴力検査ボックスの防音性能について
一般的に、聴力検査室内部の騒音レベルは30~40デシベルであれば問題ないと言われています。なお、30デシベルとは「深夜の郊外の環境音」や「鉛筆で書くときの筆記音」が目安であり、40デシベルとは「昼間の閑静な住宅地の環境音」や「図書館内部の環境音」が目安となっています。
引用:騒音の大きさの目安|深谷市
聴力検査専用のブースは、マイナス35デシベル以上の防音性能を有したものが多いです。ただしもともと周囲の騒音レベルが高くない場合、マイナス35デシベルの防音性能までは必要ないケースも数多く存在します。例えばクリニック内の騒音環境が50デシベル程度であれば、聴力検査室はマイナス10デシベル程度の防音性能があれば十分だということになるのです。
このように聴力検査ボックスに必要な防音性能は周囲の騒音環境によっても異なるため、設置想定場所の騒音レベルを確認したうえで製品を選ぶことが重要になります。
聴力検査ボックスを導入しても想定した防音性能を得られなければ、正確な検査を行うことはできなくなってしまいます。その一方で、必要以上の性能を求めるとコストが高く付いてしまう可能性もあります。導入前には、複数の製品を比較してコストと防音機能のバランスを見たうえで導入判断することが大切です。
最後にまとめ
聴力検査ボックスには、適切な防音性が求められ、その種類には半個室タイプの防音ブース、カーテンやパーテーション、専用ブースがあります。半個室タイプはコストパフォーマンスが高く設置も容易で、特に一般的な聴力検査に適しています。専用ブースは高い防音性を提供しますが、コストが高く、設置にはより多くの要件があります。カーテンやパーテーションは最も低コストですが、防音性は限定的です。聴力検査ボックスの選択は、クリニックの環境、必要な防音レベル、予算を考慮して行うべきです。
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